弁護士法人名古屋総合法律事務所は、債務整理・相続・離婚・交通事故・不動産法務・中小・中堅企業法務の6分野に特化した法律事務所です。
個人の方が破産する場合、自由財産として手元に残すことのできる財産を除いて、破産管財人が換価することになります。
自宅不動産がある場合には、管理処分権が破産管財人に移転されたうえで、破産管財人が売却をすることになります。破産管財人は、売却先を探して任意売却をするか、競売を申し立てます。
任意売却については、自宅不動産の住宅ローンが残っている場合、抵当権が設定されていることがほとんどですから、抵当権者の意向を無視することはできません。
そこで、破産管財人は、抵当権者の意向を確認しながら任意売却を進めていくのですが、自宅不動産の売却価額と比べて住宅ローンの金額が大きい場合や、抵当権者が複数いる場合等には、抵当権者が任意売却に同意しない場合があります。
この場合、破産管財人としては、任意売却ができない以上、自宅不動産を持ち続けるわけにもいかず(固定資産税の負担や管理責任等が生じるリスクがあります。)、裁判所の許可を得て破産財団から放棄することがあります。この場合、自宅不動産の管理処分権は破産者に戻ります。
そして、その後破産手続が終了し、免責許可決定がなされると、破産者は自宅不動産の所有権は残ったまま住宅ローンについては免責により支払義務を免れることができることになります。
しかし、これによって、家を残したまま破産することができる、ということにはなりません。
そもそも、裁判所から免責許可決定を受けた場合、破産者が負っていた債務はどうなるのでしょうか。
学説では、免責により債務は消滅してなくなるという債務消滅説と、免責によっても債務はなくならないが、もはや請求することができなくなる自然債務になるという自然債務説があります。
この点について、直接ではありませんが、最高裁判所も破産により免責された債務は自然債務であることを前提にした判示をしています(最高裁平成9年2月25日決定等)。
この自然債務説によると、住宅ローンの債務は免責により、消滅はしないものの、債権者は破産者に対して請求することができなくなるものと考えられます。つまり、破産者は住宅ローンを支払う必要はなくなります。
しかし、住宅ローンの債務が免責されたとしても、破産法は、破産手続によらずに抵当権を行使することを認めており(破産法65条1項)、抵当権の効力には影響しません。
また、住宅ローン債務が免責された場合には、住宅ローン債務が時効により消滅する余地がなくなり(最高裁平成11年11月9日判決)、抵当権は個別に20年の消滅時効にかかるものとされますので(最高裁平成30年2月23日判決)、時効により消滅するということも現実的ではありません。
住宅ローンのある自宅不動産が破産財団から放棄された場合には、自宅の管理所有権は破産者に戻るため、自宅を使用することができます。
しかし、破産者が免責許可を受けられる場合であっても、前述の通り、抵当権の効力が妨げられるわけではありませんので、抵当権者は、引き続き不動産の任意売却や競売を進め、その売却代金を限度として回収することができる立場にあります。
抵当権者としては、まずは任意売却を進めようとすることが多いでしょう。主には抵当権者が主導して手続を進めることになると考えられますが、破産者の不動産を売却する手続のため、破産者にも協力を求められることがあります。
最終的に、任意売却が難しい場合には、抵当権者により、裁判所に競売の申立てがなされることになるでしょう。
このように、破産手続において、自宅不動産が破産財団から放棄されると、一度は破産者に管理権が戻ることになります。
しかし、本稿で述べた通り、抵当権は住宅ローン債務の免責によって効力を妨げられるものではありませんので、結局は何らかの方法で売却されてしまい、自宅を残せるというわけではありません。
自宅不動産が破産財団から放棄され、破産手続の終了後も不動産の売却が完了していない場合には、既に免責許可を受けていたとしても、不動産の任意売却等に事実上協力しなければならないという負担が残るということになります。
しかし、破産者の意向や選択によって避けられるものではありませんので、このような負担が生じることはやむを得ないと考えられます。
2024年2月28日
債務整理を弁護士に依頼してから、弁護士から辞任されてしまったという債務者の方からのお問合せです。例えば、弁護士に依頼した場合、弁護士から債権者に受任通知を送ることにより債務者は返済しなくてもいいのにも関わらず・・・続きはこちら
2023年1月24日
クレジットカード会社等から借金をし、利息が膨らみ、毎月の返済が厳しくなった場合、クレジットカード会社等と交渉をして返済額を調整することがあります。これを任意整理といいます。この任意整理ですが、法律上の根拠があるわけではなく・・・続きはこちら
2023年1月10日
当ブログでも何度か説明しておりますが、民事再生の申立てにおいては、破産手続によって債権者が得られる弁済額以上の弁済を定めた再生計画でない限り認可されず、 これを清算価値保障原則と言います・・・続きはこちら
2023年12月11日
個人再生においては、少なくとも破産手続によって債務を整理した場合に債権者に弁済できる金額に相当する金額を上回る金額を弁済する再生計画でなければ、認可されません。・・・続きはこちら
2023年8月24日
カードローンなどの借金が膨らみ、とても満額の返済ができなくなった場合には、破産手続か民事再生手続をとることが考えられます・・・続きはこちら
2023年3月20日
債務整理には、大きく分けて任意整理、個人再生、破産の3つの方法があります。弁護士は、どの方法が依頼者にとってベストなのかを考えながら相談に臨んで・・・続きはこちら
2022年4月28日
4月になりまして、進学や就職で新しい生活をスタートされた方もいるのではないでしょうか。大学進学にあたり、利用されている方も多い、奨学金についてお話させていただきます。…続きはこちら
2022年2月7日
お金を「借りる」ことになるってどんな時でしょうか? 私たちは、生活に必要な物やサービスを手に入れる(=消費をする)ことで日々の生活を送っています…続きはこちら
2021年06月16日
自己破産において、法律上、免責不許可事由に該当しない限り、免責許可決定が出されますが、免責不許可事由の1つとして、「浪費」によって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したこと…続きはこちら
2021年05月17日
債権に対する「強制執行の申立て」があると、執行裁判所が、申立ての方式等について審査した上で、「債権差押命令」が発令されます。差押命令が発令されると…続きはこちら
2021年05月12日
個人債務者が破産手続きを開始することによって、「職業が続けられなくなるかもしれない」「資格がなくなってしまうかもしれない」と不安に…続きはこちら
2020年12月4日
日経新聞2020年10月5日の第1面に「長寿社会のリアル」と題して、このような記事が載っていました。住宅ローンの完済年齢が上昇しています…続きはこちら
2020年10月27日
個人再生で認可された再生計画に基づく返済が難しくなってしまった方もいらっしゃいます。もしハードシップ免責が適用されるなら、残債務を免責されるかもしれません…続きはこちら
2020年03月27日
債務整理とは、弁護士が代理人となって、貸金業者等と交渉を行い返済総額や毎月の返済額の減額をしたり、裁判所の決定により返済を免除… 続きはこちら
2020年02月12日
2019年12月に配信されたニュース記事で、帝国データバンクによる、2000年から2019年11月までの飲食店事業者の倒産動向についての集計等の記事が… 続きはこちら
2019年03月12日
夫婦が離婚するにあたって、財産分与の約束がされることがあります。これが、自己破産においてどのように取り扱われるか、それぞれの立場から説明します… 続きはこちら
2019年02月25日
個人再生手続の目的は、最終的に圧縮された債務を原則3年で返済する再生計画を裁判所に認められるところにあります。これが認められるには… 続きはこちら
2019年02月15日
交通事故に遭うと、加害者に対する損害賠償請求権が発生します。これは債権、つまり財産ですから、換価配当の可能性がある破産手続でどのように扱うか、という問題が生じます… 続きはこちら
2019年01月30日
金融機関の貸付債権の時効期間は5年であることが大半です。これは、貸主又は借主が会社法上の会社であることがほとんどであり、その事業のためにする行為が「商行為」にあたり、商事時効が適用されるためです… 続きはこちら
2018年04月09日
最高裁判所の平成29年統計(速報値)では、平成29年の個人の自己破産は、年間6万8791件となり、2年連続で増加しているようです。自己破産自体は、ここ10年ほどは… 続きはこちら
2017年04月28日
法律相談に来られる方からよく伺う内容のひとつに、「過払い請求は家族にも知られてしまうのか」、「破産したことは会社にも伝わるのか」といった相談があります。自らの債務状況を他人に知られたくないという気持ちはごもっともです。そこで… 続きはこちら
2017年02月14日
月々の借金の返済が厳しく、債務整理をしたい。しかし、自宅について、長年住んでいる場所である、終の棲家であるから何とか残したいなど様々な理由から、自宅を手放したくないと考える方は多いと思います… 続きはこちら
2016年02月22日
「ブラックリスト」という言葉を聞いたことがある方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、そもそもブラックリストとは何なのか、どのような場合にブラックリストに載るのか、載った場合に… 続きはこちら
2015年09月01日
随分前に借金をしたものの、長いこと返済をしておらず、放置していたが、突然、借金の返済を請求する通知が届いて、どうすべきか悩んでいるという相談をよく受けます。 このような場合は… 続きはこちら
事務所外観
より良いサービスのご提供のため、債務整理の取扱案件の対応エリアを、下記の地域およびその周辺地域に限らせて頂いております。
法人破産に関しては、広域対応をさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
【取り扱いエリア】
愛知県西部
(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区, 豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村), 一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部
(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部
(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部
(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,羽島郡(岐南町,笠松町),各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町 池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部
(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町 川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部
(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部
(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
〒460-0002愛知県名古屋市中区丸の内二丁目20番25号 メットライフ名古屋丸の内ビル6階 TEL: 052-231-2601(代表) FAX: 052-231-2602 初めての方専用フリーダイヤル:0120-758-352
■提供サービス…交通事故、遺言・相続・遺産分割・遺留分減殺請求・相続放棄・後見、不動産・借地借家、離婚・財産分与・慰謝料・年金分割・親権・男女問題、債務整理、過払い金請求・任意整理・自己破産・個人再生、企業法務、契約書作成・債権回収、コンプライアンス、雇用関係・労務問題労働事件、対消費者問題、事業承継、会社整理、事業再生、法人破産
■主な対応エリア…愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市,瀬戸市,尾張旭市,長久手市,津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町)
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,羽島郡(岐南町,笠松町),各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,
大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町 池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町 川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)