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一般に、債権は、債権者が一定期間その権利を行使しない場合には、時効により消滅します(民法166条1項)
しかし、時効には例外があります。
例えば、債務者が債務(債権者の立場から見れば、債権になります。本稿では、以下債務と記載します。)の存在を承認した場合には、時効はその時から新たにその進行を始めます(民法152条 改正前民法147条3号)。
債務の承認には、債務の存在を前提とする行為も含まれますので、例えば100万円の債務について、その一部である20万円を弁済する行為は、残額の80万円について債務の承認にあたります。
同一の当事者の間で、複数の金銭消費貸借契約を締結し、貸金返還債務が複数ある場合を考えてみます。
この場合、債務者が弁済をするときに、すべての債務について、全額弁済した場合には、当然問題にはなりません。
では、全額に満たない弁済をした場合にはどうなるでしょうか。
全額に満たない弁済をした場合、そもそもどの債務に対する弁済と取り扱われるかについては、民法上規定があります。
まず、債務者は、弁済する際に、その弁済がどの債務に充当されるかを指定することができます(民法488条1項)。
次に、債務者が充当すべき債務を指定しない場合には、弁済を受領する債権者がどの債務に充当するかを指定することができます(民法484条2項)。
そして、債務者も債権者も充当について指定をしない場合には、法律上定められた順番によって充当されます。これを法定充当と言います(民法488条4項)。
具体的には、
という順序で処理されます。
実際には、複数ある債務のうち、どれかに充当されることが多いと思われます。
そうした場合、当該充当された債務については、弁済をしているため、残額については債務を承認したことになることは明らかです。
それでは、法定充当による処理の結果、充当されなかった債務について、債務者は債務を承認したものとなるのでしょうか。
この点につき判断したものとして、令和2年12月15日の最高裁判決(民集74巻9号2259頁)があります。
事例としては、簡略化すると、三度にわたって253万5000円、400万円、300万円の合計953万5000円の貸し付けを受けた債務者が、充当すべき債務を指定せずに78万7029円を弁済したところ、上記3つの債務のうち、弁済が充当されない債務についての消滅時効が成立しているかどうかが争われたというものです。
裁判所は、債権者も充当の指定をしなかったため、法定充当により、3つある債務の内、1つのみに充当されたという前提で、以下の通り判示して、充当されなかった残り2つの債務についても債務の承認をしたものであり、消滅時効の成立は認められないと判断しました。
「同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において、借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは、当該弁済は、特段の事情のない限り、上記各元本債務の承認(民法147条3号)として消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である(大審院昭和13年(オ)第222号同年6月25日判決・大審院判決全集5輯14号4頁参照)。
なぜなら、上記の場合、借主は、自らが契約当事者となっている数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在することを認識しているのが通常であり、弁済の際にその弁済を充当すべき債務を指定することができるのであって、借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく弁済をすることは、特段の事情のない限り、上記各元本債務の全てについて、その存在を知っている旨を表示するものと解されるからである。」
上記の最高裁判例は、弁済をする債務者は、契約者張本人であるため、充当の指定をしていない以上、すべての債務の存在を認識していることを表示したものと扱われてもやむを得ないという判断をしたものです。
債権者の立場からしても、債務が複数あるのに債務を指定されずに弁済として金銭を受け取っているわけですから、債務者がすべての債務の存在を認識していると期待することも合理的なように思われます。
なお、上記判例は、平成29年の民法改正前のものですが、同改正において、時効中断等の概念が整理されたものの内容については実質的な変更はないため、改正法下においても同様に妥当するものと考えられます。
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